管理栄養士が教える!長距離運動で働く栄養素とその食べ物

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おはようございます。管理栄養士の力武ひかりです。日中でも風が吹くと涼しい季節になり、外に出かけることが増えたという方も多いのではないでしょうか。
今回はマラソンや100キロウォークに挑戦しようとしている方におすすめの食べ物をご紹介します。

長距離運動に有効な栄養素とその栄養素が含まれる食べ物

毎日のトレーニングが体力や能力を高める有効な手段でありますが、その基礎は1日3食の栄養バランスのよい食事です。長距離運動の際に有効な働きを果たす栄養素をいくつかご紹介します。

糖質

筋肉のエネルギーとなるグルコースは、糖質が主な材料となっています。また集中力を保つためにも糖質は必要です。なぜなら脳・神経系はグルコースを唯一のエネルギー源として利用しており、不足すると脳の働きが低下して、集中力が落ちてしまうからです。
※グルコース…これ以上分解されないもの(単糖)の1つです。ブドウ糖ともいわれます。
多く含む食品は米・パン・イモ類になります。

脂質

長距離運動では糖質と脂質が、約半々の割合でエネルギーとして利用されています。これは1~2時間を過ぎると糖質由来であるグリコーゲンを使い切ってしまい脂質の利用が高まるためです。脂質は消化・吸収に時間がかかるので、運動前の摂取は控えた方が良いと思います。(脂質の少ない食べ物を摂取しましょう)
脂質は栄養素としては重要ですが、食べ物の紹介をするのは今回控えさせて頂きます。植物性油脂や動物性油脂の違い・それぞれの特徴等と一緒に後々ご紹介できたらと思います。

タンパク質

タンパク質はアミノ酸が多数結合してできた、体づくりに重要な成分です。タンパク質を構成するアミノ酸は20種類あり、その中でも体内で生成できない9種類(必須アミノ酸)は外部から摂取する必要があります。外部から摂取したタンパク質は胃・十二指腸で分解され、各組織にて必要なタンパク質に合成されます。この際に必須アミノ酸が1つでも必要量より少なくなると、充分なタンパク質を生成できません。桶(おけ)の理論と言われ、図を参照すると分かりやすいかと思います。

効率よく摂取するためには、動物性タンパク質食品と植物性タンパク質食品を組み合わせ、日頃からバランス良く摂取していくことが大切だと思います。

動物性タンパク質の多い食品:肉類・卵・魚類 等
植物性タンパク質の多い食品:納豆・大豆・おから・枝豆・種実類(ヒマワリの種や落花生)等

長距離運動ではタンパク質の分解は亢進(こうしん)し、アミノ酸がエネルギー源として消費されます。エネルギー源として筋肉タンパク質も同じように分解されるのですが、筋肉タンパク質合成に必要な栄養素を運動後に補給すると、筋肉を増強することができます。使われたエネルギー源の回復にご飯(糖質)と脂肪分の少ない白身魚や赤身の肉(タンパク質)を摂りましょう。糖質+たんぱく質を摂ることがポイントです。

ビタミンB1・B6

体調を整えるビタミンは、体内で合成できない、あるいは必要量を合成できないため日常的に食べ物から摂取する必要があります。今回はエネルギーの生成と体づくりに大切なビタミンB1とビタミンB6についてご紹介します。

ビタミンB1
糖質をエネルギーとした代謝に関わっているため、欠乏により運動能力の低下がみられます。筋肉内でタンパク質をエネルギーにする際にも作用しており、運動によってビタミンB1の必要量は増加します。
多く含む食品は豚肉・豆類になります。

ビタミンB6
アミノ酸からタンパク質を再合成する過程に関与しています。また体内に存在するビタミンB6の約80%は筋肉に存在しており、グリコーゲンからのエネルギー生成にかかわっています。ビタミンB6は腸内細菌によっても合成されるため、不足しにくいビタミンです。しかし運動時に必要量が増加するため配慮が必要です。
多く含む食品は肉類・にんにく・赤ピーマン・豆類になります。

運動をすると、全身の酸素必要量が増加します。酸素の運搬はヘモグロビンが担っており、ヘモグロビンの構成成分である鉄は非常に重要です。トレーニングによる貧血の発症率も高いため、日常から摂っておく必要があります。
多く含む食品はほうれん草・卵・牛乳・レバー(肉類)・魚類になります。鉄の吸収を高めるのは、ビタミンC・動物性タンパク質・クエン酸です。例えば焼き魚やから揚げにレモンがついているのは理にかなった組み合わせです。

カルシウム

筋肉の収縮と弛緩(しかん:ゆるむこと)に中心的な役割を持っている重要な栄養素です。日本人の食生活で不足しやすいミネラルなので、意識して摂るといいですね。体内でカルシウムが少なくなると、吸収の効率が高まりますが、不足分は貯蔵している骨から供給されます。特に運動中は、筋肉でカルシウムの需要が高まることと同じ動作の繰り返しが原因で疲労骨折のリスクも高まります。
多く含む食品は小魚・乳製品・ひじき・わかめになります。カルシウムの吸収を高めるのはビタミンD・食物繊維です。例えばスイートポテトは乳製品+食物繊維の組み合わせで、カルシウムの吸収を高めます。

運動は筋肉の収縮により行われます。筋肉収縮はエネルギーとともに熱を生じ、体温を戻そうと調節する際に水が利用されます。水は筋肉で生成した熱を体外に放出する時に皮膚まで運搬し、体熱を外に出すうえで重要な役割を果たします。また汗となって、皮膚の熱を奪い体温を下げます。

よく噛むこと!消化・吸収の効率をあげましょう!!

噛んで食べ物を細かくすることで消化・吸収時間が短くなり、胃や腸の負担を減らすことができます。長距離運動の時には、よく噛むことを意識して効率の良い消化・吸収を行ない、筋肉を動かすエネルギーの材料にしましょう!

さいごに

いくつか運動する上で栄養面のポイントを簡単に紹介します。
運動の1~2時間前に500mlの水を飲みましょう。
運動中はこまめな給水(電解質がふくまれているもの)をしましょう。
運動をしたあとはすぐに食事をしましょう。
これは筋肉タンパク質をすばやく合成させ、疲労回復にもつながります。また時間を置くよりも運動直後に食事をした方が筋肉量の増加がみられます。筋肉量の増加は基礎代謝を上げ、脂肪の燃焼につながります。
次回は不足しやすい栄養素(鉄やカルシウム等)の補給に、スムージの作り方をご紹介したいと思います。
さいごまで読んでいただきありがとうございます。栄養素を意識して食材を選んだり食事のタイミングによって、筋肉の増強やタイムを短くすることは可能だと思います。参考にされてくださいね。

参考文献
日本食品標準成分表2015年版(七訂)
栄養科学シリーズNEXT スポーツ・運動栄養学/加藤秀夫・中坊幸弘・中村亜紀 編/講談社

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力武 ひかり

GENPRESS(ジェンプレス)管理栄養士
明るい笑顔がチャームポイントの管理栄養士力武ひかりです! 自身の料理経験や知識を生かし、旬菜レシピや栄養について詳しくみなさんにお届けしていきます!管理栄養士として考案したレシピを皆さんに「試してみよう♪」と普段の生活の中で使っていただければ、幸いです。趣味:料理(和食がお気に入り!)・登山・ドライブ

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