女性の髪と和歌 ―万葉集から俵万智まで

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おはようございます。ロクジンです。
今回は女性の美を象徴するものとしての髪を和歌でどう歌っているかについて述べてみます。健康理論と和歌と関係ないと思われるかもしれません。しかし真善美は魂の本質であり、心の健康にとって美の領域は欠かせないものだと思っています。和歌は文学ですので美術や音楽と同様に美を表現しています。このブログの属するキラナライフ自体のテーマが美と健康のお役立ち情報ですので、悪しからず。

目次

  • 和歌とは -「古今和歌集」より
  • 髪にまつわる和歌
  • 与謝野晶子「みだれ髪」と俵万智

和歌とは -「古今和歌集」より

さて和歌については「古今和歌集」の序に紀貫之が素晴らしい説明をしていますので、ご紹介します。

「やまと歌は、人の心をたねとして、よろづの言の葉とぞなれりける。世の中にある人ことわざしげきものなれば、心に思うことを、見るもの聞くものにつけて、言ひいだせるなり。花に鳴くうぐひす、水にすむかはづの声を聞けば、生きとし生けるもの、いづれか歌をよまざりける。

ちからをもいれずして、あめつちを動かし、目に見えぬ鬼神をもあはれと思わせ、男をむなのなかをもやわらげ、たけきもののふの心をも慰むるは歌なり。

この歌、あめつちの開けはじまりける時よりいでにけり。しかあれども、世に伝はることは、ひさかたのあめにしては、下照姫にはじまり、あらがねのつちにしては、須佐之男命よりぞおこりける。ちはやぶる神世には、歌の文字も定まらず、すなほにして、ことの心わきがたかりけらし。人の世となりて、須佐之男命よりぞ、みそ文字あまりひと文字はよみける。」

このわが国最古の和歌とされる須佐之男命の歌は「古事記」にも「日本書紀」にも出ています。

やくも立つ出雲八重垣妻籠みに八重垣作るその八重垣を 

髪にまつわる和歌

まず髪で思い浮かぶのは在原業平のことを書いたといわれる「伊勢物語」の「筒井筒」(つついづつ、つついつつ)での幼馴染の二人の相聞歌
筒井つの井筒にかけしまろがたけ過ぎにけらしな妹見ざるまに
(つついつのいづつにかけし)
くらべこし振り分け髪も肩過ぎぬ君ならずしてたれかあぐべき

俵万智の「チョコレート革命」の中から二つ
眠りつつ髪をまさぐる指やさし夢の中でも私をだくの
枝毛切るともなく髪の先見つめ考えているこれからのこと

「万葉集」から大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)の歌
黒髪に白髪交じり老ゆるまでかかる恋にはいまだ会はなくに

同じく「万葉集」から三方沙弥(みかたのさみ)からの歌
たけばぬれたかねば長き妹が髪このごろ見ぬに掻きいれつらむか
(たくは結い上げる ぬれはほどけの意)

 妻の園臣生羽(そののおみいくは)からの返し歌
人は皆今は長しとたけと言へど君が見し髪乱れたりとも

 これも「万葉集」からで作者不詳ですが
振分の髪を短み青草を髪に綰くらむ妹をしぞおもふ
(綰くはたくと読み、上と同じ意味だが全体をまとめるの意)

 「拾遺集」から和泉式部の歌
黒髪のみだれも知らずうち臥せばまづ掻きやりし人ぞ恋しき

 「千載集」から待賢門院堀川の歌で百人一首にも入っています
長からむ心も知らず黒髪の乱れて今朝はものをこそ思へ

 昭憲皇太后の御製
そで垣にさく朝顔の花をみて髪くしけづる時のおくれぬ

与謝野晶子「みだれ髪」と俵万智

 髪と云えばやはり与謝野晶子の「みだれ髪」が出てきます

この「みだれ髪」は結構難解な所もあり、俵万智が「チョコレート語訳 みだれ髪」として大胆に現代語訳してしています。この現代語訳は翻訳の域を出ており、いわば小沢征爾がブラームスの交響曲一番を自分独自の解釈で指揮しているようなもので、俵万智の「みだれ髪」だと思います。両方並べて見ましょう。

髪五尺ときなば水にやはらかき少女ごころは秘めて放たじ
たっっぷりと湯に浮く髪のやわらかき乙女ごころは誰にも見せぬ

その子二十歳櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな
二十歳とはロングヘアーをなびかせて畏れを知らぬ春のヴィーナス

春の国恋の御国のあさぼらけしるきは髪か梅花のあぶら
春の国恋の御国の朝がくる我が髪の香をシンボルとして

とき髪に室むつまじの百合のかをり消えをあやぶむ夜の淡紅色(ときいろ)よ
髪ほどき睦むベッドの百合の香の消えそうな夜、淡き紅色

人かへさず暮れむの春の宵ごこち小琴(をごと)にもたす乱れ乱れ髪
君待ちて暮れゆく春の宵ごごろ琴に重なる乱れ乱れ髪

たまくらに鬢(びん)のひとすぢきれし音を小琴と聞きし春の夜の夢
手枕に髪の一筋切れた音を琴の音と聞く春の夜の夢

みだれ髪を京の島田にかへし朝ふしてゐませの君ゆりおこす
朝シャンにブローした髪を見せたくて寝ぼけまなこの君ゆりおこす

御袖ならず御髪(みぐし)のたけときこえたり七尺いづれしら藤の花
七尺の髪を垂らせる乙女いて嫉妬しているしら藤の花

最も有名な「みだれ髪」の歌
くろ髪の千すぢの髪のみだれ髪かつおもひみだれおもひみだるる

 対して与謝野鉄幹の歌
あな寒とたださりげなく言いさして我を見ざりし乱れ髪の君
わが好きは妹が丸髷くぢら汁不動の呪文しら梅の花

いかがでしたか?気になった方は是非それぞれに関する本を手に取ってみて下さい。

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寺本麓人

代表取締役社長佳秀工業株式会社
佳秀工業株式会社 代表取締役社長。1948年生まれの現役経営者で、大きな夢を持ち、日々悪戦苦闘しながらも着々と夢に向かって前進しております。身体・心・環境の「三つの健康」に寄与できる事業展開を常に考え動いています。 趣味は美しいものなら何でも。美術、音楽、文学、大自然の景観、古い街並やモダンなデザイン、演劇、花鳥風月、もちろん女性も。海も山も川も大好きです。夜明け、夕暮、雨だって好きです。ローソクのあかりも。気になるコトには何にでも首を突っ込みます。考えるコトも好きですが、どちらかと云うと「やってみなけりゃワカランやん」という事で、行動を重視しています。多読で乱読、気に入れば精読。どんな本でも片っ端から読みます。

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