美の感性を磨こう<後編>

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おはようございます。ロクジンです。
本日は、前回に続き『美の感性』について、私自身の経験から感じることをお話したいと思います。

目次

  • 『絵』からわかる、その時代の人々の生活
  • 母と妻の”スタイリスト”
  • 世界中の美術館へ
  • さいごに

『絵』からわかる、その時代の人々の生活

構図のセザンヌ、色彩のゴーギャンと言われます。私は絵画は「構図」と「色彩」と「エピソード」の三つが大きな要素だと思っています。
西洋では昔は教会の為の宗教画が主体でした。職業画家が喰う為には絵を買ってくれる人が必要で、パトロンがいるのです。当然、イエス・キリストや聖母マリアに関するエピソードが多い訳です。それから王侯貴族がパトロンとなり、自分たちの祖先の活躍や家族の肖像画でお城の中の壁面を飾りました。その後ブルジョア階級が台頭してくると、自分たちの邸宅の壁面を飾る絵画が必要になり、自分たちの身近な出来事や美しい自然の景色や憧れの情景、などがテーマとなってきました。
本物の美術品に沢山接していると、色彩感覚やデザインに敏感になり、その絵画のもつエピソード等にも詳しくなって、歴史や宗教やその時代の人々の生活等も分かるようになります。

私は日本の内外で多くの印象派の絵を見てきましたが、モネやゴッホ等の絵画の中に多くの日本の浮世絵が出てきます。浮世絵は印象派に大きな影響を与えたのです。印象派の画家たちは浮世絵の模写をしたり、技法を取り入れたりしています。
面白いなとおもうのは、日本の浮世絵は庶民の為のもので、出てくる人たちも皆庶民です。そして、買い手も庶民なのです。いくら印象派の人たちの絵画でも、当時の庶民は簡単には買えません。日本の浮世絵は版画という形で多くの庶民に買われ愛されました。そして浮世絵をよく見てみると、当時の庶民の生活が良くわかるのです。江戸時代の日本は庶民文化の華が開いた時代でもあったのです。文学でも井原西鶴や近松門左衛門等に出てくる主役は皆庶民です。詩の世界でも短詩の俳句の愛好者は庶民です。そうしてみると、江戸時代の日本は思った以上に民主的で快適な社会だったのではないかと思われます。

母と妻の”スタイリスト”

会社の事故で父が急逝した後に二代目の社長に就任した母とよくデパートに買い物に行きました。社長ともなれば外出する事も多く、母の外出着を買いにいったのです。
母は個性が強く、好き嫌いがはっきりしていて、自分の気に入ったデザインや色彩のものしか選びません。しかし、私からみたら別の物の方が良く似合うのにナーと、惜しいと思う事がありましたので、母に、騙されたと思ってこの洋服を試着してみてくれと頼みこんで試着してもらいました。そうすると中々良く似合うのです。母もビックリ。自分の好みと、似あう似合わないとは、あまり関係ないのです。
こんなことがあり、母は洋服のコーディネイトについては私の言う事を良く聞いてくれるようになりました。そして、デパートの店員さんも、見立てが上手ですねとよく褒めてくれました。その時に感じたのが、多くの世界的名画を鑑賞し、色彩とデザインに対する感覚が磨かれていたのだという事です。その後、母が亡くなり、今は家内の洋服の見立ては殆ど私がしています。家内も私がした方が恰好いいので、私にお任せです。

世界中の美術館へ

その後、私は世界中の有名な美術館を巡りました。好きな美術館には何回も足を運びました。初めてプラド美術館に行った時には「裸のマハ」と「着衣のマハ」の前に行き、「やっと会えたね、マハ、どちらも綺麗だよ」と心の中で呟いたものです。ウフィツィ美術館には三回行きましたが、いく度にボッチチェリの「ヴィーナスの誕生」の前で「相変わらず美しいね」と挨拶します。

ベルリンのペルガモン博物館に行った時のことです。見学人の中に何とボッチチェリのヴィーナスにそっくりの美女を見つけたのです。こんな事があるのかと思えるほどビックリしました。私は今でもあの美女はヴィーナスで私がいつもウフィツィ美術館で彼女を褒めるものだから、ちょっと本物の人間の姿で自分がどれだけ美しいかを見せてやろうと茶目っ気を出して出てきたのだと思っています。ゲーテのファウスト博士は何年間かヴィーナスが世界一の美女と云ったヘレナと同棲したがそれでも満足出来なかったという事ですが。私ならどうでしょうか。

ニューヨークの近代美術館にはマチスの「ダンス(Ⅰ)」があります。エルミタージュ美術館にはマチスの「ダンス(Ⅱ)」があります。シリーズで、両方とも鑑賞できたことは幸運です。マドリードに行った時は時間が十分に取れず、タクシーをとばしてソフィア王妃芸術センターに行き、「ゲルニカ」だけを見てすぐに帰りました。あの巨大なゲルニカの本物の迫力に圧倒されたのを今でも憶えています。

さいごに

時々「日本のビジネスマンは仕事の話ばかりで面白くない」という話を世界の一流のビジネスマンがする事があると聞きました。
お陰様で私は誰と話ししてもあんまり臆した事がありません。人間として尊敬できるかどうかが評価の対象であって、えらいとか有名とかであんまり左右されないのです。
人間関係というのは信頼関係があってはじめて成り立つものです。人間の魂の本質としての真善美あるいは仁義礼智についての理解の共有があって、漸(ようや)く心の扉が開かれるものではないでしょうか。それは世界共通だと思います。今の日本の受験体制や一流企業の採用の仕組みなどを考えた時に、真善美の感性を磨く機会なんてあるのかいな とちょっと危惧している昨今です。

美の感性を磨きましょう。人生がもっと豊かになってきます。

美の感性を磨こう<前編>

 

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寺本麓人

代表取締役社長佳秀工業株式会社
佳秀工業株式会社 代表取締役社長。1948年生まれの現役経営者で、大きな夢を持ち、日々悪戦苦闘しながらも着々と夢に向かって前進しております。身体・心・環境の「三つの健康」に寄与できる事業展開を常に考え動いています。 趣味は美しいものなら何でも。美術、音楽、文学、大自然の景観、古い街並やモダンなデザイン、演劇、花鳥風月、もちろん女性も。海も山も川も大好きです。夜明け、夕暮、雨だって好きです。ローソクのあかりも。気になるコトには何にでも首を突っ込みます。考えるコトも好きですが、どちらかと云うと「やってみなけりゃワカランやん」という事で、行動を重視しています。多読で乱読、気に入れば精読。どんな本でも片っ端から読みます。

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