いいトリートメントの条件。裏面表示で選ぶ時の参考に!

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キラナライフの山川です。ヘアケア製品について20年ほど前から疑問に思っていることがあります。キロ単価が安すぎます。女性にとって頭髪は肌よりも大事なものであると考えられているといったデータがあるのに女性は髪にはコストをかけません。シャンプー、トリートメントは美容液であってもよいと思います。洗い流しはするもののしっかり考えられた製品は開発者の思いがちゃんと頭髪に残ります。ということの一例を記述したいと思います。

本稿において「トリートメント」とは、in Bath(風呂の中)において、シャンプー直後に頭髪に油分を与えたり補修したりする目的で頭髪に塗布した後お湯ですすぐものとし、一般に「リンス」、「コンディショナー」と分類されるものも含みます。

目次

  • 頭髪の構造
  • ダメージヘアとトリートメントの役割
  • いいトリートメントとは
  • まとめ

 

1.頭髪の構造

毛球で次々と分化してできる毛母細胞は皮膚細胞の一種で皮膚と同様に上へ押し上げられるにつれて角化していき、ケラチンを主成分とした図1のようなキューティクル(毛小皮)、コルテックス(毛皮質)、メデュラ(毛髄)に分かれて毛髪を形成します。

○キューティクル(毛小皮)

キューティクルはコルテックスを覆い、毛の表面を占めています。毛球付近では1層の細胞でコルテックス細胞を取り囲んでいますが、角化するにつれて硬く扁平状になり、魚の鱗のように重なり合います。毛穴には体内の有害物質や重金属が排出されますが、毛が伸びると同時にキューティクルはそれを毛穴の外側まで運ぶ機能も担っています。

また、キューティクル外面には、図1のように18-MEA(18-メチルエイコサン酸)というものが結合しています。このおかげで、毛髪表面は油になじみやすく、水をはじく性質になり、軋みを低減し、クシ通りをよくします。さらに油になじみやすくなっておりますので、毛穴より分泌される皮脂が髪になじみコーティングの役目をして外部の環境の変化や刺激から髪の毛を守れるようになります。

○コルテックス(毛皮質)

1)コルテックスの細胞は2種類に大別できる

毛髪の大部分を占めているコルテックスは、毛球付近の毛母細胞が徐々にケラチン繊維を細胞内に作りながら皮膚表面に向かって移動し、角化して縦に細長いケラチン繊維で充満した死んだ細胞になります。コルテックスは、ケラチン繊維がらせん状に配列するオルト様コルテックスとケラチン繊維が毛髪と平行に配列するパラ様コルテックスの2種類に大別できます。それぞれのコルテックスの性質を以下に記します。

・オルトコルテックス:親水性が強い。軟らかい(シスチンが多い)。
・パラコルテックス :疎水性が強い。硬い(シスチンが少ない)。

2)2種類の細胞の配置で毛髪の性質は異なる

シスチン(ジスルフィド)構造は硫黄元素同士の結合で、硫黄を混ぜて弾力を増すゴムの構造と「-S-S-結合」という点で似ていますので、シスチンの多い・少ないがコルテックスの柔らかさ・硬さに関係していると思います。図のようにオルトコルテックスとパラコルテックスが配置されたものがきれいな直毛を示すようで、私はちょうど芯に動線の束が走りその周りに絶縁体の樹脂で取り囲んでいる電気コードをイメージしています。縮れ毛の人はオルトコルテックスとパラコルテックスが図のように入り乱れているらしく、電気コードで例えるとそれぞれ絶縁体の線と銅線が入り乱れて配置されていれば、少なくともきれいに配置されているものよりはしなやかさに欠けるものになりそうですね。

3)メラニン色素には紫外線を吸収する効果

毛母細胞は毛球でメラノサイトからメラニンを受けとり、毛髪に色がつきます。毛髪の大部分を占めるコルテックスの色が髪の色を支配します。毛髪のメラニン色素は黒色系の「ユーメラニン」と黄・赤色系の「フェオメラニン」の2種類があり、それらの割合で色味が変わり、粒の大きさや量で色の濃さが変化します。メラニン色素は紫外線を吸収する性質があり、紫外線による毛髪や地肌へのダメージをやわらげる働きもあります。

○メデュラ(毛髄)

毛髪の中心部に位置します。毛球当たりでは毛髄顆粒という丸い顆粒を作りますが、角化するとスポンジ状の多孔構造になります。スポンジ状ですので断熱機能があり、また、メデュラが整っているかどうかが髪の光沢に大きく関与します。

2.ダメージヘアとトリートメントの役割

1)ダメージヘアとは

物理的にはシャンプー、コーミング、ブラッシング等の行為により、化学的には太陽による紫外線、プールの塩素、海水浴では海水による塩分やpH、ドライヤーの熱、毛染め、パーマ等により、毛髪は以下のようなダメージを受けます。

1.18-MEAの欠損
2.キューティクルの剥がれ
3.空洞化(油分の損失、たんぱく質の変質等による)

2)トリートメントの役割

・ダメージを受けないようにする。(物理的損傷の回避)

物理的な損傷は摩擦によるものがほとんどです。摩擦によりキューティクルや18-MEAが剥がれます。摩擦を回避するためにトリートメントは、カチオン界面活性剤による18-MEA機能とおなじ機能の回復と油分による毛髪表面コーティングをします。

・ダメージを補修する。(空洞化箇所の充満)

空洞化が広がれば毛髪の力学的強さと光沢に大きな影響を与えます。コルテックスやメデュラの空洞の充満は毛髪の強度を強くします。また、空洞による乱反射が少なくなり髪の艶が良くなります。

3.いいトリートメントとは

いいトリートメントとは上記のトリートメントの役割を最大限発揮できるものと考えています。トリートメントは毛髪につけてなじませた後に洗い流すものです。そして、トリートメントはその使用感から乳化されたタイプが一般的に使われます。乳化とは、界面活性剤などを用いて水と油を見た目分離させないようにする現象です。例として図4a,b,cのように油を界面活性剤で取り囲む(エマルジョンになる)ことで、油が水中に存在できるようになります。乳化のタイプによって次に示すように効果の発揮の仕方が異なることが予想されます。

1)非イオン界面活性剤による乳化(一般的なトリートメント)

トリートメントの乳化は非イオン界面活性剤によるものが最もポピュラーです。非イオン界面活性剤はシャンプー、ボディーソープにも助剤程度で使用されていますが、食器用洗剤といった強力な油汚れを落とす製剤などにも主成分として配合されています。つかんだ油はなかなか離さない性質があります。非イオン界面活性剤により乳化されたトリートメントの油は非イオン界面活性剤で囲われているため図4-aのようなイメージで油分が毛髪に、付着しにくいと考えられます。

※非イオン界面活性剤の裏面表記例
「ポリオキシエチレン・・・」、「POE・・・」、「・・・グリセリル」、「ポリオキシプロピレン・・・」、「ポリソルベート・・・」、「PPG・・・」

2)非イオン界面活性剤を配合しないカチオン乳化(効果が期待できるトリートメント)

トリートメントには一般的に4級アンモニウム界面活性剤(カチオン界面活性剤)が配合されております。非イオン界面活性剤が配合されていない製剤はカチオン界面活性剤が乳化することがあります。18-MEAが欠損した毛髪表面は-(マイナス)に帯電しているためカチオン界面活性剤は電気的にその部分に結合し、毛髪表面は疎水性になると考えられます(図4-b参照)。するとエマルジョンが壊れ、包括されていた油が露出し、油が毛髪表面をコーティングするようになると考えられます。

3)レシチン様成分による乳化(効果が期待できるトリートメント)

レシチン、セラミド、ジラウロイルグルタミン酸リシンNa等、レシチン様の構造を持つ乳化剤(以下、レシチン様乳化剤)で乳化するトリートメントがあったとします。毛髪はもともと細胞であり細胞膜はレシチンなどでできています。したがって髪の中にも膜成分が残っています。レシチン様乳化エマルジョンは膜成分と良く馴染むため頭髪内部にじわーっと入り込んできます。その際に油分や蛋白質も毛髪内部に入り込み、毛髪にハリ、コシ、艶が付与されます。

4.まとめ

安全性は大前提として、いいトリートメントとは使用した人に感動を与えるほどその役割が発揮できるものと考えています。本稿は油をいかに毛髪に付着させるかを追及した一例として、非イオン界面活性剤を配合しないという手段を挙げています。しかし、非イオン界面活性剤を配合しなければ安定なエマルジョンをつくることが難しく、この問題を解消するにはそれなりのコストがかかります。もっとわかりやすい例として、防腐剤の皮膚などへの影響を懸念してパラベンやフェノキシエタノール等の防腐剤の代わりに皮膚や毛髪に残らないエタノールを防腐目的で配合するということは容易に思い付きますが、防腐にかかる原料コストは10倍程度に跳ね上がり、製剤も不安定な方向に向かい、安定化のためのコストがかかります。

非イオン界面活性剤や防腐剤やpH緩衝剤等、通常配合されるべきものが安全・安心のために配合されていない製剤は、実は製造・開発コストがかかっていて、しかし、消費者には安心して使える効果の高いモノであるかもしれません。

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山川雅之

GENPRESS 品質保証・責任技術者 日本毛髪科学協会 毛髪診断士
■公益社団法人 日本毛髪科学協会 毛髪診断士 ■公益社団法人 日本毛髪科学協会認定講師 ■趣味:無趣味で楽をすることが好きです。例えば、野球より和牛をバスケよりビスケを、バレーよりレバーをサッカーよりサッカロースを好みます。おかげでメタボに片足を突っ込んでいます。それが原因ではないと考えているのですが、アラフォー以降の年々の尿酸値の高まりに最近になって危機感を覚え、独自の改善方法を編み出すことを趣味代わりにしております。

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