摂ってうれしいクエン酸。化粧品への配合ってどうなの?

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風呂の鏡のうろこ(カルシウム塩)除去の情報収集をしているキラナライフの山川です。

今回の記事はクエン酸をテーマにしていますが、皆様の化粧品・食品選びにも役立つかもしれません。
クエン酸は金属にこびりついたカルシウム塩除去という役目で掃除に使われます。ということは、クエン酸を飲んだり、塗ったりすると体中のカルシウムが除去されてしまうのではと心配になりませんか。
是非一読していただければと思います。

 

目次

  1. クエン酸の名称の由来
  2. クエン酸は体内の金属の運び屋
  3. クエン酸は呼吸に大きく関与
  4. 呼吸はミトコンドリアでクエン酸を使って行われます
  5. クエン酸を使って呼吸するミトコンドリアがなければ酸素は細胞毒
  6. クエン酸のようなキレート成分も体内で分解されなければ悪影響
  7. 化粧品の一種であるシャンプーにクエン酸を配合していいのか
  8. 化粧品の裏面表示にクエン酸やEDTAが配合されているかがわかります

 

1.名称の由来

クエン酸の「クエン」は日本在来種のミカン科「丸仏手柑(まるぶしゅかん)」の漢名「枸櫞(くえん)」が語源だそうです。英語では「Citrate」で、柑橘類を意味する「Citrus(シトラス)」が語源となります。クエン酸を直接舐めてみると、柑橘類の中でも酸っぱい夏ミカンや橙などの風味を感じ、語源のとおり柑橘類主体の酸であることを妙に納得させられます。

2.キレート効果

「クエン酸」で連想されるものの一つにポットなどのクエン酸洗浄が挙げられます。ポットを長年使用していると、水道に含まれる二価金属のカルシウムが溶存二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムとなり、白い物質がこびりついてきます。クエン酸はこれを自身のもつ3つのカルボン酸で以下のようなイメージでこびりつきを取り除きます。


このように一度つかんだ金属をクエン酸はなかなか離しません。そして、金属をつかんだまま水に溶けていますので、炭酸カルシウムのような不溶性金属塩中の金属を溶存させることができます。これをキレート効果といいます。クエン酸よりも効果の高いEDTA(エチレンジアミン四酢酸)というキレート剤がありますが、これは自身の持つ4つのカルボン酸で図のように金属をつかんで溶存させます。カニがはさみで金属を挟んだ様子を形容して、「カニのはさみ」(ラテン語Chela)がキレート(Chelate)の語源となりました。

3.クエン酸は体内の金属の運び屋

カルシウム、マグネシウムのように他の酸と反応して沈殿を起こしやすい金属をつかんでクエン酸は血液中に入り込むなどして体内中を駆け巡り、必要な場所に金属を運ぶ重要な役割を果たしています。しかし、一度つかんだ金属を離さないのであれば、金属を必要な部分に受け渡すことなくとおりすぎてしまうのではなかろうか、体内中の金属を奪って、体外に排出してしまうのではなかろうかと心配になるかもしれません。
そこで、クエン酸摂取については次のA、Bの研究が行われています。
A.動物の餌に大量のクエン酸を添加してその動物の排泄中のクエン酸量を確認した。
B.クエン酸を全く与えず、長期間飢餓状態にして排泄中のクエン酸量を確認した。
Aの研究の結果は、大量のクエン酸を摂取したにもかかわらず、クエン酸の排泄量の増加は見られませんでした。Bにおいてはクエン酸を摂取していないにもかかわらず尿中にクエン酸が排出し続けられたという結果が得られました。これらの結果は、クエン酸は体内で分解もされ合成もされていることを示します。

4.クエン酸は呼吸に大きく関与

現在では、体内でのクエン酸の分解や合成については「クエン酸回路」として非常によく解明され、生化学分野では有名な代謝経路となっています。クエン酸回路は、クエン酸が酸素消費の関係する電子伝達系の作用を受け、二酸化炭素と水を出しながらコハク酸→フマル酸→リンゴ酸→オキザロ酢酸といった名だたる有機酸に変化していきます。最後にオキザロ酢酸と糖や脂肪の代謝物「アセチルCoA」からクエン酸が合成され、ここからまた、クエン酸回路が回ります。「二酸化炭素と水を出しながら」回っているクエン酸回路。酸素を消費して二酸化炭素と水を出すと聞いて何を連想しますか。実は上流の解糖系やβ酸化という経路を含めて呼吸(燃焼)と関係しているんです。

 5.呼吸はミトコンドリアで行われます。

呼吸をするには体内にクエン酸がなくてはならないのです。しかもこれを司っているものがミトコンドリア。人間等の真核生物(染色体をもつ生物)の細胞の小器官でありながら独自に遺伝子を持っています。ミトコンドリアはもともと原核生物(染色体をもたない生物)で、真核生物に侵入して共生関係を築き上げたといわれております。ミトコンドリアは、酸素でもってクエン酸回路を回してエネルギーを作り、人を動かしています。まるで、人はミトコンドリアに操られているようですが、皮膚細胞の寿命は約7週間、ミトコンドリアも細胞に合わせて生死を繰り返して次の世代のために、そして、我々を生かすために頑張っています。私もこのかわいい分身たちのために一生懸命に生きなければとの励みにもなります。

6.ミトコンドリアがなければ酸素は細胞毒

ところで、生物は、脊椎動物やカビなどを含む「真核生物」と納豆菌や大腸菌などの「原核生物」に大きく分けられます。また、「原核生物」は酸素を好む「好気性菌」と酸素を嫌う「嫌気性菌」に分けられます。好気性菌と真核生物はクエン酸回路を持ちます。このような生物はクエン酸を分解する能力があるため体内において金属を運んできたクエン酸を必要なところで分解して金属を得ているのかもしれません。骨組織はカルシウムなどの金属が必要なところですが、実際に、そこにはクエン酸が局在しています。そしてそれは、他の臓器や組織から運ばれてきたものであると結論付けた報告があります。一方、嫌気性菌はクエン酸回路を持ちません。嫌気性菌Streptococcus mutans にクエン酸を与えるとそのキレート効果のため発育を阻害したという報告があります。クエン酸回路を持たない生物では、クエン酸は体内の金属を欠乏させる毒として働くのかもしれません。

 7.キレート成分体内で分解されなければ悪影響

では、体内では分解されないキレート剤EDTAの真核生物に対する影響はどのようなものでしょう。蚕の孵化直後の幼虫において様々な濃度でEDTAを投与したところ濃度が高くなるにつれてその成長を遅らせたり死亡率を高くしたりする結果が報告されています。EDTAが高濃度になるほど体内の金属が欠乏することが裏付けられています。

 8.シャンプーにクエン酸を配合してほんとにいいのか

これまでクエン酸の経口摂取は体内に悪影響を与えないと述べてまいりました。化粧品や医薬部外品にもクエン酸はよく配合されています。塗布・洗身など外用では、身体にどう影響するのでしょうか。人の皮膚表面の角質や毛髪は死んだ細胞ではありますが、整ってなければきれいな肌や毛髪にはなりません。シャンプーやボディーソープは、肌や毛髪に必要な金属を過剰に洗い流し、傷みの原因になる可能性も考えられます。化粧水や美容液等は洗い流さないもののクエン酸自体を肌にとどめることになります。塗布による刺激もある文献に記載されていますので、肌に残さないほうが無難でしょう。

 9.化粧品の裏面表示に留意してみてはいかが

化粧品や医薬部外品、医薬品等の外用剤の多くはEDTA(エチレンジアミン四酢酸Na)やクエン酸などのキレート剤を含みます。二価の金属は様々な物質と反応し沈殿を起こしやすくそれを防止する目的で配合されるのですが、皮膚からの金属流出の懸念は皮膚上でのクエン酸の分解作用がない限り捨てられません。カルシウムやマグネシウム等の二価の金属は皮膚を整えるのに重要な成分であります。化粧が合わないなどの原因はキレート剤による肌や毛髪からの金属の流出なのかもしれません。化粧品を変える際はキレート剤の配合の有無も考慮してみると肌や毛髪トラブルの解決になるかもしれません。

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山川雅之

GENPRESS 品質保証・責任技術者 日本毛髪科学協会 毛髪診断士
■公益社団法人 日本毛髪科学協会 毛髪診断士 ■公益社団法人 日本毛髪科学協会認定講師 ■趣味:無趣味で楽をすることが好きです。例えば、野球より和牛をバスケよりビスケを、バレーよりレバーをサッカーよりサッカロースを好みます。おかげでメタボに片足を突っ込んでいます。それが原因ではないと考えているのですが、アラフォー以降の年々の尿酸値の高まりに最近になって危機感を覚え、独自の改善方法を編み出すことを趣味代わりにしております。

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