アルコール(エタノール)配合育毛剤って頭皮に悪いの?

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おはようございます。キラナライフ、サイエンス担当の山川です。
最近、薄毛に悩む女性が増えています。女性の薄毛については様々な原因があるのですが、血行が悪かったり、頭皮や毛髪への栄養が不足したりすることによる薄毛の場合、育毛剤を検討される方もいらっしゃると思います。
女性用の育毛剤にも様々な種類のものがありますが、直接塗布するものですから配合成分の頭皮や毛髪への影響については気になる方が多いと思います。本日は育毛剤では使用されることの多い成分であるアルコール(エタノール)をテーマに致します。
実際に育毛剤を検討している方を想定してQ&A形式で書いてみたいと思います。

目次

  • エタノールの頭皮への影響
  • エタノールを育毛剤に配合する目的
  • エタノール配合によるその他のメリット
  • まとめ

エタノールの頭皮への影響

Q:私は今、そろそろ育毛剤を検討しようと思っていますが、いろいろ調べてみるとアルコールフリーを謳っている育毛剤があります。アルコールは頭皮によろしくないのでしょうか。

A:多くの人にとっては悪い物質ではありません。
しかし、稀に化粧品でよく配合されているアルコールであるエタノールとの相性が良くない方もいます。エタノールによる接触皮膚炎、蕁麻疹、アレルギーなどで炎症を起こす方たちです。接触皮膚炎であれば低濃度のエタノールの化粧品には反応が出ないことがありますが、アレルギーであれば低濃度であっても炎症を起こしてしまいます。
アレルギーの場合はエタノールの代謝物であるアルデヒドが原因物質であると言われています。体内でエタノールはアルデヒドに代謝され、その後、アルデヒド脱水素酵素の作用により酢酸に代謝を経て炭酸や水となって排出されます。
特に日本人の中にはお酒で悪酔いをしてしまう方がいますが、これはアセトアルデヒド脱水素酵素の働きが弱く体内にアルデヒドが蓄積されるためです。アルデヒドは人体にとって有害な物質であり、エタノールはアルデヒドの発生源となります。

Q:多くの人には悪い物質ではないとのことですが、少数の人たちにとって有害な可能性があるようなエタノールをなぜ育毛剤に配合するのですか。

A:育毛剤や化粧品に配合されるほとんどの成分は、ある方にとっては非常に有用な成分であっても、別の方にとってはアレルギーを引き起こす成分であったりします。エタノールも例外ではないというだけの話です。
市販の育毛剤にはエタノールを配合しているものが非常に多くみられます。それは多くのメーカーがエタノールの配合が育毛剤として有用であると考えているからです。
アルコールフリーを謳っている育毛剤は、エタノールに対して接触皮膚炎などを起こしてしまう方たちのために開発されたのではないでしょうか。そのような製品も大切であると思います。

エタノールを育毛剤に配合する目的

Q:ところで、エタノールが育毛剤にとってどのように有用なのですか。

A:まずは直接的なところからですが、脂漏を伴う男性にエタノールを外用すると、急速な増毛の傾向がみられることがあります。
「社団法人 毛髪科学協会」の発行する書籍には、それはエタノールの殺菌、浄化作用によるものであるとのことです。脂漏性皮膚炎が軽快して血管拡張作用が働いたと考えられるそうです。但し、エタノールだけでは長期的な増毛効果はないとのことです。

Q:アルコールフリーを謳っている育毛剤にもエタノールのような増毛効果はありそうですか?

A:殺菌という意味ではエタノールフリー育毛剤にも別の殺菌剤を配合して効果を出しているものがあるかもしれません。しかし、育毛剤はシャンプー・リンスのように洗い流すものではないため、育毛剤の成分は頭皮に残りやすくなります。化粧水などを使用する方の皮膚でパラベンなどの防腐剤が残存していることが検証されていますが、殺菌剤もパラベンと分子構造が似ているものも多く、肌に残存することが予想されます。また、パラベンとは異なる構造を持つ塩化ベンザルコニウムのようなカチオン系殺菌剤は菌だけでなく人の細胞も直接攻撃するものでありますので、頭皮のようなデリケートなところにはあまり使いたくないでしょう。
ところがエタノールは殺菌作用があるにもかかわらず頭皮につけた後乾いてしまうと揮発してしまいますので皮膚に残りません。エタノールを配合しない育毛剤はどうしても防腐剤の配合が必要となりますが、エタノール配合育毛剤はエタノールの防腐効果のため防腐剤を配合する必要はありません。頭皮に残すべきものだけを残したいという開発者の思いが育毛剤にエタノールを配合しているのかもしれません。

エタノール配合によるその他のメリット

Q:殺菌剤は一般的に揮発しないから皮膚に残るけどエタノールは殺菌という大切な役割を終えて揮発してなくなるから皮膚に悪影響を与えにくいのですね。

A:そうです。エタノールの揮発性はそれとは別のことにも育毛剤の機能として大切な役目を果たしています。頭皮には毛髪が生えていますね。そこが化粧水を適用する肌とは大きく異なるところです。肌や頭皮にはいつまでも保湿感やしっとり感を残したいものですが、特に育毛剤を使用する方は使用後にいつまでも毛髪がべたべたする状態を嫌うと思います。化粧水などは、保湿等の目的でBG(ブチレングリコール)やポリグリセリン等の多価アルコール類を配合しますが、これらは皮膚にはよくなじみますが不揮発性のため毛髪に付着するとべとべと感が残ります。エタノールの場合は毛髪に残りにくいためべたべた感は残りませんので、毛髪にとっては非常に有用です。

 Q:エタノールは揮発してよく乾くことはわかりますが、頭皮や毛髪にも保湿が必要ではないでしょうか。

A:おっしゃる通りです。エタノールにはさらに別に育毛剤として重要な働きをします。それは浸透性です。
例えば毛穴は非常に開口部が小さく細い穴になっていることは何となく想像していただけるかと思います。そして水滴より小さな開口部の穴に水滴を落としても穴の中までは水が入らないことも想像していただける方も多いと思います。これは水の表面張力が高いことに起因します。
下図のように水、エタノール/水(1:1)混液、エタノールそれぞれを小瓶の口から入れてみた結果、水は瓶の口部に半球状にまとまって、瓶中に入らなかった様子がうかがえますが、これは表面張力が高い液体の現象です。エタノールは表面張力が低いので小瓶にスムーズに入っていきます。エタノール/水(1:1)混液についてもエタノールは水と混合することで水の表面張力を劇的に減少させてしまいますので、小瓶の中に入ってしまいました。


同様に育毛剤にエタノールを配合することでより毛穴に入りやすくなり水分そして水に溶け込んだ養分、NMF(Natural Moisture Factor)やヒアルロン酸等の保湿成分を毛根まで届けやすなります。また、毛髪にも損傷による毛髪メラニンホールなどの小さな孔があり、そのようなところにも保湿成分や毛髪補修成分を届けやすくする働きがあります。

つまり、エタノールの育毛剤への配合は使用時のべたつきを抑えつつ、頭皮や毛髪へ保湿成分等を運ぶ役割をします。

まとめ

いかがだったでしょうか。育毛剤のエタノール配合には次のような効果があります。

①頭皮を清浄にして増毛効果を促す
②頭皮に残存しない防腐剤としてはたらく
③べたつく使用感を抑える
④保湿成分などの養分を毛根に届けやすくする
⑤毛髪メラニンホールなどへ保湿・補修成分を届けやすくする

エタノールに対して特に問題がない方には、私はエタノール配合の育毛剤をお勧めしています。一度お試しになってみてはいかがでしょうか。

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山川雅之

GENPRESS 品質保証・責任技術者 日本毛髪科学協会 毛髪診断士
■公益社団法人 日本毛髪科学協会 毛髪診断士 ■公益社団法人 日本毛髪科学協会認定講師 ■趣味:無趣味で楽をすることが好きです。例えば、野球より和牛をバスケよりビスケを、バレーよりレバーをサッカーよりサッカロースを好みます。おかげでメタボに片足を突っ込んでいます。それが原因ではないと考えているのですが、アラフォー以降の年々の尿酸値の高まりに最近になって危機感を覚え、独自の改善方法を編み出すことを趣味代わりにしております。

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